※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「あと少し、このままでいさせて」
ほんのり朱に染まった頬で、ユキが呟く。
私はこの真綿のような、そして少し重い愛を知ってしまって、多分毒されてしまった。
だから、はらりと落ちる雪のように囁かれた言葉に、ゆっくり頷いていた。
「うん」
そして小指に絡まる細い小指を、きゅっと握り返す。
繋がった些細な部分が、人の熱に触れて温かい。
「……ごめんね」
守ってあげられなくて。
そのつらさを一番知っているはずの私が、愛をもらってばかりの私が、なにもしてあげられなくて。
言いたいことはたくさんあるはずなのに、呟いたその声はあまりに小さくて、吹きつける風にもかき消されてしまうほどだった。
「ん?」と小さく首を傾げたユキの花のような微笑みが視界いっぱいに広がって――私は視線をもう一度伏せた。
ユキの綺麗な笑顔が、込み上げてきたものによってぼやけてしまったから。
私はごめんねさえも届けることができない臆病者だ。
それなのに、ユキに嫌われたくないと、そう思ってしまった。
全部、ユキのせい。
ユキのせいで絆されておかしくなってしまった。
ユキが花の間を舞う蝶なら、私はほこりまみれの電気に群がる蛾だ。
――そうなることを望んだ。純粋な気持ちなんて、もうどこかに捨てて強くなったつもりでいたのに──。