パーフェクトラブ〜激愛されて困ってます〜
私はその場から逃げたくて、走り出そうとした。なのに、足は動かなくて……いい匂いがして、視界が暗くなるのがわかった。

私、どうかしちゃった?


ち、違う。私、元谷さんに抱きしめられてるんだ。

「元谷さん、何で?」

「嬉しくて、抱きしめたくなった」

優しく耳元で囁かれ、

「あっ……」

くすぐったいような、痺れるような感覚を初めて知った。

「小橋さん……可愛い」

また強く抱きしめられた。

「も、元谷さん」

「は〜い」

「は〜いじゃなくて……っていうか何でそんなに弾んだ声なんですか?」

もう、私……パニック過ぎて何が起きているか分からないんですけど!?

「俺、小橋さんのこと好きだから」

「……はい?」

「覚悟しておいて。これからはガンガンいくから」

だから、耳元で囁かないで。
ドキドキが止まらなくて、元谷さんに聞こえるかもしれない。
抱きしめている体を少し緩めて、私の方を見てニッコリ笑う元谷さん。可愛くて、でもセクシーで......私の心は、爆発しそうだ。まだ何か起きているのか把握できていない私。再び私のことを抱きしめる元谷さん。こんなことありえないでしょ!!からかわれてるのかな?

「私のこと、からかってます?」

「からかってない。俺、真剣だから」

抱きしめてた私から、少し離れ、私のことを見つめる瞳に、吸い込まれそうだ。

「元谷さんなら、私なんかより綺麗で、若い女性のほうがお似合いですよ」

「本当にそう思うの?」

悲しそうな顔で私を見つめる。

「私は、元谷さんを見ているだけで幸せだから......」

「俺は嫌だ。小橋さんのことを見ているだけなんて......それとも付き合っている人がいるとか?」
「この私が付き合っている人がいるなんて絶対有り得ないです」

恥ずかしくなって俯いた。

「私が好きなのは元谷さんですから。でも、元谷さんのこと、全然知らないし、それに私、恥ずかしいけど、恋愛したの、この歳で初めてで......それにこんなに太ってますし......」

最後の方は、声が小さくなってしまった。

「小橋さん可愛い」

また、ぎゅっと抱きしめてくる元谷さん。

こんな私のどこがいいの?理解ができない......


「あっ、ごめんね。こんな遅い時間に呼び止めて。嬉しすぎてこのままずっと一緒にいたくなっちゃった」

幸せそうに笑う顔が可愛くて......やっぱり元谷さんのことが好きだ。

「気にしないでください。ただ、家に帰るだけですから」

元谷さんが私の肩に手をかけた。

「小橋さん、俺と付き合ってください」

「......私、35歳ですよ。いいんですか?」

「俺は24歳です。俺じゃダメですか?」

「にっ、24!! 若い〜若すぎます」

「恋愛に年齢は関係ないでしょ?大事なのは、本当にお互いを好きかどうかだと思う。小橋さんを見てて、心がこんなに穏やかな気持ちになったこと今までなかった。だから小橋さんじゃないとダメなんです」

真剣に私に気持ちを伝えてくれる元谷さんから目が離せなくて......

「好き......」

素直な気持ちを言葉にしていた。

元谷さんの顔が照れながら笑顔になっていく......

「小橋さん、それ反則だから」

「えっ?」

どういう意味?全然分からない。

「可愛すぎる」

そう言われ、また抱きしめられた。






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