パーフェクトラブ〜激愛されて困ってます〜
「すげぇ、会いたかった」

雷斗くん、言葉が男らしくなってる。ふふっ、いつも優しい口調なのに。そのギャップが嬉しい。

「私も、会いたかったよ」

抱きしめられてる腕が、強くなっていくのがわかった。ずっとこのままでいたい。私だけの雷斗くんになってくれたらいいのに。


「でももう、終わりにしよう」

雷斗くんは、驚いて私の顔を見た。

「今日、見たよ。雷斗くんが他の女性と、楽しそうに話しているところ」

「......」

「今までありがとう。私、雷斗くんと一緒にいられて幸せだったよ」

「......」

なんで何も言ってくれないの?

やっぱり私は必要ないってことだよね。これが現実。しっかりしろ、美結雨。

「わっ、私。帰るね、きゃっ、あっ」

私は強く抱きしめられた。

「美結雨だって......」

「......私?」

「美結雨だって、イケメンな男と話してたし」

雷斗くんの声が小さくなっていく......

「イケメン?」

誰だろう?

抱きしめられてるから、どんな表情してるのかわからない。怒っているというか、拗ねてるというか。雷斗くんが、可愛いと思ってしまった。

「BARの店員さんと楽しそうに話してたじゃん。それに久しぶりに会った美結雨は綺麗になってて......やっぱり俺じゃダメなのかな?」

雷斗くんも私に気づいていたの?もしかしてヤキモチ?なんだか嬉しい。私は強く、雷斗くんを抱きしめた。

「聞いてるの?」

雷斗くんは、真剣な顔をして私を見つめた。

「聞いてるよ」

「じゃぁ、答えて」

不安そうな雷斗くん。

「あの人は......お兄ちゃんだよ」

私は笑顔で答えた。

「......お兄ちゃん」

「そう。私のお兄ちゃん。あのお店のオーナーだよ。今日は、たまたま連絡があって行っただけ。雷斗くんに今日は会えないって言われたし。だから、仕事の帰りに寄ったの。そうしたら、雷斗くんと若い女性が楽しそうに話しているし......きっとあの人が本命なんだろうなぁって思ったよ。私のことは、きっと雷斗くんのなかでは、抱き枕みたいな?ぬいぐるみたいな存在なんだろうなぁって。
あっ、ごめんね。私、何言ってるんだろう。かっ、帰るね......」

恥ずかしい。きっと私、顔が真っ赤だ。それに泣いてる。こんな顔を見せたくない。雷斗くんの前では笑った私でいたい。

なのに......

雷斗くんは、また私を抱きしめた。

「はっ、離して......」

「......嫌だ」

「雷斗くん?私の話、聞いてた?」

「聞いてたよ」

「なら、もう会えないよ」

「彼女と幸せになっ、て」

泣いてるからきちんと話せない。

「美結雨のバカ......俺が好きなのは、美結雨だけだよ。あの女性は、取引先の社長の娘さん。1回だけ会ってやってくれって言われたから、食事して。あのBARで少し飲んだだけ。ずっといたいとか言われたけど、好きな人が気になって、早く会いたいから帰るって言って、タクシーに乗せて帰らせた」

「雷斗くん......」

「雷斗って呼んで」

「えっ?」

腕の力が緩くなり、雷斗くん......あっ、いや雷斗が私を見つめた。

「言って......」

「らっ、雷斗」

私は、恥ずかしくて、雷斗の胸に顔をうずめた。

「行こう、中で話そう」

「えっ?」

私たちは、ずっと玄関で話していたのだ。

雷斗に手を繋がれ、リビングに入った。窓から夜景が見える。

「綺麗......」

「ふふっ、美結雨って子供っぽいところあるよな」

雷斗の笑った顔を見るのが好き。

「ふん。ごめんね、成長してなくて」

拗ねてみる。

「美結雨のそういうところ、好きだよ」

「雷斗......」

「そんなに見つめるなよ。俺の理性、すっ飛ぶから」

雷斗は、ワシャワシャと頭を掻きながら私から顔を逸らした。

< 16 / 29 >

この作品をシェア

pagetop