キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
バージンロードを………

お父さんと一緒に歩いてくる。

そういえば『もう少ししたら式に参加してもらえなくなるから
お姉ちゃんも早く結婚した方が良いよ。』って言ってたなぁ。

あれって………

どんなにお父さんの事を嫌いだと言っても

こうやって、歩きたかったって………事だよね。

ホントは………

お父さんの事………大好きだったんだ………。

お父さんの手を離し

和也さんと歩き始める。

これからが尋ちゃんの新しいスタートだね。

パイプオルガンの厳かな音楽に合わせて

一歩、一歩進んで行く。

神父さんの誓いの言葉に

「はい。」と

静かに、しっかりと答えていく。

ねぇ、尋ちゃん。

見えてる?

二人を祝福してくれる沢山の人達だよ。

みんな、笑顔いっぱいだね。

良かったね…………。

二枚目のハンカチを

ソッと先生に渡される。

誓いのキスを見た時は………

つき合い初めた、ホワイトデーの日の事を思い出した。

あの日先生の車で送ってもらって

ウチの駐車場に車を停めて待っていたら。

黒の車で帰って来た尋ちゃんが

和也さんとキスをしたの。

キスどころか

男の人とお付き合いする事すら分からないと泣いていた私は……

ショックで固まったの。

学校の先生と付き合っているって聞いてたから………

和也さんの事、ふしだらだって嫌悪した。

けど、今なら分かるよ。

キスは愛情表現。

だからこの結婚式で………誓いのキスをするんだよね。

後少しで………

唯もみんなの前で………誓うんだ。

尋ちゃんのように

幸せそうに見えるかな?

唯と先生の結婚式を想像してる間に

全てが終わり、二人がゆっくり歩いてくる。

しずしずとゆっくり歩く尋ちゃんは

ドレスの裾を踏まないように下を向いていた。

唯の前に来た時。

一瞬歩みを止めて、唯を見つめて………

「ありがとう。」と言おうとして…………………。

後ろに広がる、沢山の人達に気づいたみたい。

泣き笑いの顔で……

全ての人を見回して。

唯に今度こそ「ありがとう。」と呟いた。

隣を歩く和也さんの肩も震えていた。

「良かったな。」

先生がソッと耳打ちした。

< 114 / 398 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop