キンダーガーテン五      ~ここが居場所~
泣き止む唯を待って

どこかに電話をかける先生。

「ファックス用紙が散乱していて、唯ちゃんが泣いてた。」

今の現状を、電話で伝えているみたい。

無言電話も言った方がいい?

「先生。」

顔を上げると

「もうちょっと待って。」と口パクで伝えて

チュッとキスを一つ落とされた。

たったキス一つ。

でも……それだけで安心する。

ちょっと前までは、怖かったのに………。

先生だからだよね。





泣きつかれて、膝に頭を預け

いつの間にか眠っていたみたいで…………

頭を撫でる、先生の大きな手の感触に目を覚ました。

「大丈夫?」

不安そうな先生の顔に、全てを思い出した。

「…………おかえりなさい。」

「ただいま。
怖い思いをさせてごめんね。」

大丈夫だよ。

もちろん怖かったけど………

先生はちゃんと帰って来てくれるもんね。

以前はここに一人で

みんなが帰って来るのをずっとずっと待っていたんだよ。

……………それでもなかなか帰って来なかったのにね。

だから大丈夫。

ニッコリ笑う唯の頭にキスをして

「お腹空いたね。
遅くなったけど、夕ごはん食べようか?
明日はみんなが遊びに来てくれるって。
今日淋しかった分、賑やかになるよ。」
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