死にたがりのブルース

社会人、7年目。



もう中堅社員として昇進も夢じゃない年齢にもなったのに、ここ最近は上司から厳しく当たられていた。


毎日毎日、遅くまで残業して。


自分の仕事でも手一杯なのに、見栄張って後輩たちの仕事もフォローしてやって。


安い給料では毎日やり繰りするだけでも、精一杯で。


好きなものも買えず我慢して、馬鹿みてぇだ。


俺ってなんのために今日まで生きてきたんだろうか。


佐原 智一(さはら ともかず)、29歳。


5年間交際している恋人はいる。


側から聞いたら幸せそうな話だろ？


ところがどっこい。


彼女……蒔田 優子(まきた ゆうこ)にはここ最近、やけに結婚を迫られている。



金のないこの状況で世帯を持ち、彼女を喰わせる自信なんて、皆無で。


それでも優子を手放せず、今日まで関係を続けたのは俺の弱さが原因だった。



もう、すべてが苦しくて逃げ出してしまいたい。



そう思って、マンションの屋上から飛び降りることに決めたのだ。