死にたがりのブルース
180度ガラリと姿の変わった彼女...いや、彼を見て、動揺を隠し切れずに声が震える。


「えっ、お、男、だったのか、お前」



「おう。この姿のままだったら、お前、生意気だなんだとか言って俺を殴ってただろ? 見え見えなんだよ、そんな考えが」


確かに。


序盤で殴ってたな、確実に。



「騙して、たのか」


少しでも可愛いだなんて感じていた自分に、失望する。


半開きな目で見つめれば、閻魔大王は再びあの少女の姿に戻り、ワザとらしく瞳を潤わせた。

「ふぇぇーん。佐原 智一、そんなイジワルなこと言わないでよぉ〜」


「コロコロ姿を変えるのはやめてくれっ。色々と変化についていけなくなる」


ポンっ、と成人男性の姿になった閻魔大王は突然、乱雑に俺の腹部を蹴りつけた。


「うおっ! いきなりなんだよ?!」


「はい、もう五月蝿いから生き返っていいよ。さようなら、佐原 智一くん」


コイツ、姿が変わったら急にドSになりやがった……!


蹴られて後方に仰け反った身体は戻ることなく、そのまま何かに引っ張られるようにして、光の中へと落ちていく。



「う、うわぁぁぁぁ」




満面の笑みでヒラヒラと手を振る閻魔大王の姿が、徐々に小さくなっていった。



「……ま、せいぜい頑張れよ」
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