5分以内で読めるショート・ホラー集
早苗への苛立ちがおさまらなくて、彼女の存在を頭から消したくて、
ケータイでやり取りしたデータや写真もすべて処分した。

でも、夢にまで悪夢として出てきてしまう。

人間ってのは悲しいことに、嫌な奴ほど、頭にこびりついて離れないみたいだ。
どうしたら、この憎しみの呪縛から逃れられるのだろう。


いっそ、早苗が死んでくれれば。


私は人づてに噂を聞いていた、ある霊媒師のことを思い出した。
齢八十を超える、山奥に住む女性の霊媒師だ。
藁人形に写真をのせ、釘を打ちつけその人物を呪い殺してくれる、という。

いわゆる「丑の刻参り」だ。

彼女の呪殺力は、相当の効力を発揮するといわれている。

早苗との写真は処分したせいで、今は手持ちにない。けれど、通勤中にでも尾行して隠し撮りでもすれば、すぐに手に入る。
かつての親友の生活サイクルくらいは、把握している。
< 33 / 45 >

この作品をシェア

pagetop