幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
夜桜
私の思っている以上に彼はグイグイと迫って来る。
彼の積極的なアプローチに戸惑いながらも嬉しかった。

車を駐車場に停め、清掃道具と使用済みのリネン類を出した。

「鈴木さんは仕事の吞み込みが早いですね…感心します」

「玉城さんの指示が分かりやすいんですよ。そうだ・・・待ち合わせは桜並木の入り口いいですか?」

「あ、うん・・・」

「楽しみです」

鈴木さんは二日目の勤務だけど、仕事にはすっかり慣れ、彼の人柄か他の従業員達とも仲良しになっていた。

******
私は更衣室で私服に着替えた。

鈴木さんと夜桜を見るなら、もう少しお洒落しておくんだった。

色の褪せたジーンズに襟口のヨレたトレーナー姿の恰好を見て、盛大な溜息が出た。

恰好はともかく、メイクだけでもキレイにしよう。

メイクポーチを取り出し、ファンデを叩き、桜の色と同じ光沢あるピンクのグロスを唇に塗った。



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