幻想ウエディング~人魚姫には王子様の甘いキスを~
でも、そこは飲食代や席代と言って客に高額請求するぼったくりバー。
水割り一杯で三十万とかあり得ない。
いつ警察に摘発されるかとビクビクしながらも、命じられるままに客を接待し、ガンガン飲ませて、泥酔させた。

私はずっと言え知れない罪悪感に苛まれていた。

そして、とうとう警察の摘発が入った。
私達は裏口から外へと逃げ出す。

私は途中で皆とはぐれてしまい、一人で逃げる羽目に。

歩くのがやっとのピンヒール。

走っていても直ぐに追いつかれてしまいそうな亀のようなのろさ。このままでは警察の追手に捕まってしまう。そう焦っていると舗道の窪みにヒールの踵が嵌り込み、派手に扱けてしまった。
雑踏の中。
私は皆の注目の的。

「大丈夫か?」
一人の男性が長身の背を屈め、手を差し伸べてくれた。

顔を上げ、彼の顔を見つめる。
鮮やかな光彩を放つネオンよりも目立つ金色の月のような髪。
晴れやか青空色のブルーアイズ。
私の目の前に月と太陽が同時に現れた。
彼の澄んだ青い瞳が私を心配そうに見ていた。
「立てっ」

私は彼の手を掴んで、立ち上がった。

「来いよ」

彼は私の腕を掴んで、走り出す。




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