冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「今夜はだーめ」

「きゃっ」

急に肩を引き寄せられて短く声が出る。バランスを崩した身体に密着したのは……安西部長だった。

「今夜は俺が先約なんだ。横入りすんなよ」

その声音は低く、口調は軽いけれど目は笑っていない。

「先約? あの、彼女に何の用ですか?」

健一は噛みつくように声を尖らせ、安西部長に眉を顰めた。

「何の用かだって? それをお前に言う必要があるのか? 結婚前の男が、ちょっと気が多すぎやしないか?」

痛い所を突かれて健一は視線を床に落とし、目を泳がせた。

「ただでさえお前は専務に目をつけられてるんだ、社内ではせいぜい大人しくしてろ。それが彼女へのせめてもの償いだ。違うか?」

「そ、れは……」

安西部長にはすべてを知られている。そう悟った健一は言い返す言葉もなく尻すぼみになる。

背後からほかの社員がお喋りをしながらやって来る気配がすると、安西部長は抱いていた肩を離し、健一は唇を噛み締めると何も言わずにその場を立ち去って行った。
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