冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「わぁ! すごーい!」

「広いね!」

そこへ三人の若い女性がキャッキャと盛り上がりながら浴室へ入って来て、私は出て行くタイミングを逃してしまった。軽く会釈をしながらかけ湯をした女性たちが湯舟に足を入れ、私もそれに返事をすると静かに隅っこへ寄った。

「佐々岡さんに東京に戻ったらまた会おうって言われちゃった!」

ん? 佐々岡?

聞き覚えのある名前が飛び込んできて、思わず耳を傾ける。

「あんなイケメンがひとりで宿泊って、訳アリな感じだよね~」

「絶対金持ちだよ、雰囲気でわかるって感じ?」

「そうそう、時計だって高級ブランド品だったし!」

女性たちは私に構わず下世話な話に花を咲かせている。その佐々岡さんを私も知っているなんてことは思いも寄らないだろう。

あの人たちも佐々岡さんにナンパされたのかな?

今日、部屋に女の人連れ込んでたよね? あそこにいる三人とは違う人みたいだったけど……佐々岡さん、やっぱりサイテー。

浮気グセ、という言葉に健一のことが思い起こされる。そして学生時代、ほかに好きな人ができたからと言ってフラれた過去もついでに蘇る。

居た堪れなくなって私は湯舟からあがると、一瞬眩暈がした。

のぼせたかな……飲み物でも買って部屋に戻ろう。

なんとか堪えて浴衣に着替えると、私は大浴場を後にした。
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