冷徹部長の溺愛の餌食になりました



『……怒ったり否定したりしないから、言ってみろ』



彼のその眼差しと初めて聞く柔らかな声に、嘘じゃないかもしれないと感じて、私はそれまでの経緯を全て話した。



久我さんは黙って話を聞いてくれて、そのうちに私は泣き出し、上手く言葉が出てこなくなってしまったけれど、それでも急かすことなく待っていてくれた。

そして全てを聞き終えた彼は『そうだったのか』と呟き頷いた。



『つらかったな。あとは俺に任せろ』



そう言って頭を軽く撫でてくれたその手は優しくて、不安でいっぱいだった胸が安心感であふれるのを感じた。



その後、久我さんが取引先の担当者と上司と直接話をしてくれたようで、私のもとには取引先から担当者変更の知らせと謝罪の電話が入った。



『今回は本当に申し訳ございませんでした。久我さんから、霧崎さんは大変優秀な方だとうかがっておりますし、こちらといたしましては今後もぜひ霧崎さんに担当していただきたいと思っております』



取引先から聞いたその言葉が、嬉しかった。

久我さんが、自分の話を聞いてくれて、自分のために動いてくれた。

私が思う以上に、彼はきちんと私を見てくれていたんだと知った。


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