冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「それと、恋人がいる相手にその発言はいかがかと思いますよ。これ以上言うようでしたらこちらも対応を検討させていただきますが」



直接的な言い方はしていないけれど、その低い声と覚めた瞳からは強い圧を感じる。

山内さんもそれに気づいたようで、顔を青くして黙り固まってしまった。



そんな彼を見て、久我さんは私の腕を引き歩き出す。

足早にその場を去る彼に、私は小走りで必死についていく。



あれ、なんか久我さんの今の態度って……もしかして。



「あ、あの……今夜会食なんてありましたっけ」

「さぁな」



こちらを見ることなく、前を歩く久我さんはやっぱりそっけない返事で終わらせてしまう。

けれど、嘘をついて断ったり、牽制したり……先日『どうでもいい』と言っていた人の態度とは思えない。



本当は、ちょっと気にしてくれていたのかな。

だから、わざとあんなそっけない言い方をしたり、自分と比べた言い方をしたりしたのかな。なんて、都合のいい解釈をしてしまう。



そうだったらいいのにな。そうだったら、嬉しいのに。

こうやって、またひとつあなたの一面を知って、期待をして、胸がときめく。



そしてそのたびまたひとつ、あなたを好きになる。




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