私は王子様を離さない
~雅side~

教室に入り、自分の席に座ると、前の席にいる陽太が話しかけてくる。

「雅、教えろ!」

「何をだよ」

いや、教えろだけ言われてもな……。
すると、陽太は俺の肩を掴む。

「愛実さんと仲良くなった理由だよ!」

「え……突然どうしたの?」

なんで急にそんなこと? ……?!
ま、まさか……。

「だってお前、愛実さんと手繋いでたじゃん」

っ……やっぱりそれかぁ! 気付かれないように注意してたんだけどなぁ。

「何故キミは、あの可愛いけど無愛想なことで評判な氷の姫こと愛実さんと話してたんだ?」

な、なにゆえって……。
というか、愛実ってそんなあだ名付いてたんだ。

「ま、氷の姫はさっきオレが考えたあだ名なんだけどな!」

そういうことか。
陽太ってこーいうあだ名付けるの好きだよなぁ。

「愛実とは幼馴染なんだよ」

すると、陽太は首を傾げながら、

「幼馴染だからって中学生になっても手繋ぐのか……?」

と言う。
まあ、そうだよな。いくら幼馴染でもあれはおかしい。

「もしかして、愛実さんって雅のこと好きなんじゃね?」

……だよな。その可能性あるよな。でも、俺的には違うと思う。
誰にも言ってないが、愛実の両親は愛実が幼い頃に他界してるんだよな。それで、甘えられる人がいなかったから、幼馴染の俺に甘えてる……んだと思う。というかそうであってくれ。俺には他に好きな人がいるからな。誰かは言わない。

その後も、陽太に質問攻めを受けたが、先生が来たことによって強制終了。晴れて俺は陽太の質問攻めから開放されたのだった。


「みーくん、一緒に帰ろ〜」

校門を出ると、愛実が腕を絡ませてくる。
なんか…何時もより甘えてきてないか……? まあ、どうせ言っても無駄だろうしいいか。もう誰も居ないし。

「ねえ、明日遊ぼ〜! 明日は土曜日なんだしっ! 久々にさ〜」

凄いくらい期待するような目で見てくる愛実に、俺は少し可愛いと思ってしまう。
明日は何もすることないし、何もしないよりかはマシか。

「まあ、いいけど」

すると、愛実はキラキラと目を輝かせる。

「やったぁ! ありがとう、みーくん!」

軽くピョンピョン跳ねて喜ぶ愛実は子どものようで、可愛らしい女の子そのものだった。

「じゃあ、10時に駅に待ち合わせね!」

おいおい、勝手に決めるなよ。と思うが、誘ったのは愛実の方だし、まあいっか。

「あ、もうお別れだね……まあ明日! みーくん!」

分かれ道、愛実は寂しそうな笑顔をしながら言う。……なんか、大袈裟だな。
俺は愛実に向かって手を振り、自分の家に帰った。
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