泣いた、緋鬼
「僕もそろそろしなきゃとは思うんだけど…、やる気が出ないんだよねー」

誠は笑って手をヒラヒラと振るとまた鏡に向き直る。




「――そうか。なら今は良い」





希は鏡とにらめっこをしている誠に呆れながらソファに座った。

「受験、か…」

誠も、将太も、希も、高校三年生で大学へ入れば、自然と族から離れていく。

そうなる前に、次の総長を決めなければいけないのは、希にとって難しい問題である。

希は大きく息をはくと、ソファに身を委ねる。




―――そのときだった。





バァァン!と激しい音をたてて、幹部室のドアが乱暴に開かれた。

入ってきたのは、顔を真っ青にした慶太だった。
< 118 / 170 >

この作品をシェア

pagetop