敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
敏腕社長に捕まりました。
羽山先生のスタジオを後にして、恭介さんと2人でやどり木に向かった。

「恭介さん、今夜の1曲目は恭介さんのためだけに弾きます。覚悟して聴いてください」

そう言ってくすりと笑うと、驚いた顔をしていた恭介さんもニヤリと笑った。

「ああ。覚悟しておく。
じゃあ、いってらっしゃい」


恭介さんに送り出されて、控え室に向かった。
深いブルーのドレスに着替えて、深呼吸をした。



店内の様子を伺って、ピアノに向かった。
弾き始める前に、恭介さんを見つめた。

恭介さん、聴いてください。
私の気持ちを。


ーシューマン(リスト編) 〈献呈〉ー


ロベルト・シューマンが、妻になるクララに結婚前夜に捧げた曲。
恭介さん、私と出会ってくれてありがとう。
私を好きになってくれてありがとう。
私の味方になってくれてありがとう。

まるで逆プロポーズのようなこの曲。
これが私の今の気持ちです。
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