敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】



「失礼な言い方になってしまうことを承知でお話をさせてください。
ここのところ、コンクールで華さんを見かけなくなったのですが、華さんもピアノを弾けないような怪我をされたのでしょうか?」

「華は……幸い打ち身だけですんだので、身体的にはもう何も問題ないんですよ。ただ、綾があんなことになったのは、自分をかばったせいだと負い目に感じているんです。
あの事故以来、華はピアノを弾かなくなってしまいました。綾も私も夫も、誰も華を責めたりしてないんですけどね……」

「そうでしたか。
私は以前、コンクールで華さんの演奏を聴いて、凄い演奏家が出てきたと一瞬で虜にされたんです。コンクールのたびに、華さんの演奏が聴けるのではないかと、楽しみにしていたんです。
まさか、華さんがピアノから遠ざかっていたとは……」
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