real face

「あの写真に写っているのは私の家族なんです。母と弟と妹と私。双子の弟は母似なんですけど、私と妹は……父似らしいです」

私はあんな父に似ているのだと思うと、寒気が襲ってくる。

「へぇ、だから分からなかったのか……」

「何が、分からなかったんですか？」

「あ、いや、弟たちと似てないなと思ってた」

「確かに弟と私はあまり似ていないかも。たった数秒でそこまで見抜いたんですか？」

さすが佐伯主任……侮れない。

「今日は蘭先生が来てるって事、知らなかったんだろ」

「はい。こんな偶然ってあるんですね。悪夢のような再会でしたけど、いつかこうなるはずだったんだし、それが今日だったんだと思えば……」

仕事で関わりが出てくるんだったら、避けられない運命だった。
これで免疫ができたと思えば、次に遭遇してもきっと耐えられる。
私も逃げてばかりじゃなくて、もっと強くならなきゃ。

｢私、幼い頃は父が大好きで、公認会計士という立派な仕事をしている父を誇りに思っていました。私も父のようになりたいと、父に認められるような立派な大人になりたいと、思って……｣

主任は黙って私の話を聞いてくれている。
休憩中だからかな、リラックスモードの優しい眼差しで。

｢『私も公認会計士になる』って宣言してました。中学２年生くらいまでは……｣

そう、両親が離婚することになるまではね。

｢私の両親はとても仲が良くて、家族みんな幸せで、ずっとそれが永遠に続くんじゃないかと信じていました。それだけに、裏切られた悲しみが大きくて。私の中での未来設計が粉々にくずれてしまいました｣

こんな私の本音を誰かに話したのって、初めて。
ほんの少しだけのつもりだったのに、言い出したら止められなくなった。
でも、このままどこまでも曝し続けてはダメ。
また、仮面を剥がすことになってしまいそう……。