real face
「あ、いや、たまたま私が喫煙室で休んでたら主任が来て。そうだ、イチにぃと佐伯主任は知り合いなんだってね」

「佐伯が言ったのか!?あいつ他人には極力自分のことを話したりしないんだけどな……ふーん」

「イチにぃは話すんだね。佐伯主任、私たちが昔からの知り合いって知ってたし。まあ、佐伯主任も『イチにぃ』って呼ぶくらいだから、親しい間柄なんでしょうけどね」

「おい!翔がそう呼んだのか、まひろの前で?………なんだよ、スイッチ入ってたんじゃねーか。ちきしょう!」

「……スイッチ?」

「え、いや、こっちのこと。気にすんな」

「でも、佐伯主任とのコンビなんて!聞いてなかったし!!」

「言ってなかったから。事前に話したら断られそうだったからな。でもどっちにしても課長である俺の判断だから。木原さんのやり方を否定するわけじゃないけど、俺は俺なりにやり方を変えるつもりでいる。女性社員にもどんどん外に出ていってもらうからな」

「あの、佐伯主任は知ってるの?コンビの件」

「今日から出張だし、知らねえよ。帰ってきたら決定事項だと伝えるだけだ」

やっぱり……そんなことだと思った。
佐伯主任の反応がコワイ。
ていうか、アレ以来まだちゃんと話をしていないのに、いきなりコンビだなんて。

「しかし翔のヤツ、なんで喫煙室に入ったんだろうな。タバコ吸わないくせに」

なんですって? タバコ吸わないって!?
あ、でも『トイレを探してる』って言ってたような。
聞かれたから答えたけど、トイレ行かなかったよね主任。

「まひろだって吸わないのにな。煙のない喫煙室なんて、ただの密会現場だ。おっと!俺は何も見ていない見ていないっと」

これ、どう考えてもあの現場、見られていたんじゃないの!

「まあ、失恋の傷を癒すのは、新しい恋だっていうしな。頑張れよ新コンビ!」

そうだった、忘れていた。
私、木原課長にフラれたばかりだったんだ。
また結婚相手探し、しないとなぁ。

「そういえば、イチにぃも課長だし、将来有望?顔は別として、キープしとこうかな」

「ばーか、俺は無理だよ。そんなこと解ってるだろ。投げやりになるな。まひろはきっと幸せを掴めるはずだから。とりあえず、俺の部下として仕事頑張ってくれ」

「はぁーい、宮本課長」

そうよ、幸せを掴むためにすべきことはたくさんある!
サブとはいえ、私もRYUZAKI工房の担当になったんだから、しっかり頑張らないと。
そして気が重いけど、確かめてみないといけないよね。
あのキスにはどういう意味があったのか?
だって私、あなたとコンビに……。

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