real face
午後イチで"コーヒーカップ"に乗りたいと言ったら、全力で拒否された。
回転系はどうも苦手らしい。

「もしかして"メリーゴーランド"も苦手でした?」

「あれは別の意味でな。もう多分乗らないだろうな」

ああ、コーヒーカップ乗りたかったな……。

~♪

「あ、主任!田中さんからメールきました。きっとさっきの写真を送ってくれたんですよ」

メールに添付されている写真のデータを開く。
主任と私のツーショットが2枚。
私だけしか写ってないのが2枚。
私とサッチンのツーショットが1枚。
全部で5枚だった。

「結構上手く撮れてると思いませんか?でも主任1人の写真がないですね」

耳を赤くしてレアな照れ顔なのにな。

「田中太郎さんに嫉妬されたら困るから、撮らなかったんじゃないのか?」

田中……太郎さん?

「太郎さんって、誰ですか?」

「田中花子さんのご主人」

ご主人って、太郎さんって名前なの?

「なんで知ってるんですか、ご主人のこと。知り合いですか?」

ブッと吹き出し、笑い転げる主任。

「花子さんに似合う名前って太郎くらいしかないだろ!そうあってほしいなという、願望?」

な、なんだ……冗談か。
主任が言うと、本当にそうなのかと思っちゃうよ。
本気か冗談か、分かりにくすぎる!


「蘭さん、高いところ平気なのか?」

私たちは観覧車に乗っている。
遊園地の最後のシメは観覧車と相場が決まっている。

「実は怖いですよ。だから上の方に行くと外なんか見れません」

「乗らなければ良かったんじゃないか?」

「ううん!どうしても乗りたかったんです……佐伯主任と」

きゃ!つい本音を言ってしまった。

「じゃ、こうしてたら怖くないか?」

向かい合わせに座っていた主任が、立ち上がって私の隣に腰かけた。
そして、私の手を取って主任の膝の上で握りしめてくれる。

「……ちっとも怖くないです」

「そうか、じゃ降りるまでこうしていよう」

高いところって怖くてドキドキするけど、主任に守られているようで安心できるから不思議。
別の意味でドキドキしちゃって、結局のところ心臓の稼働率はグングン上がるばかりだけど。

「今日の弁当も美味かったよ。蘭さんは料理が得意なんだな」

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