real face
──4月1日。

問題なく引き継ぎも済み、今日から正式に教事1課に着任になった。

今日が歓送迎会らしい。
普通、3月の内にやるもんじゃねえか?
木原課長の都合に合わせたそうだから、仕方ないのか。
飲み会なんて面倒だ。
どうせ宮本課長に飲まされるに決まっている。
回避できるものならしたいが、そういうわけにもいかないだろう。
夕方、宮本課長と外に出てたから、そのまま会場に直行することになった。

「宮本課長、佐伯主任、お疲れさまです。席はこちらですのでどうぞ」

蘭さんの案内についていくが、なんか不機嫌じゃねえか?
無愛想な上に、態度がギスギスしている。
一応、歓迎会でもあるんだよな?

「蘭さん、席取ってくれたんだね。ありがとう」

宮本課長がにこやかに礼を言っているのに、この女ときたら。

「私ではありません。もう勝手に席次表で決まってましたから!……知ってたくせに」

席についてみると、ネームプレートが置いてあった。
俺は宮本課長の隣で、同じテーブルには蘭さんの席もあった。

『勝手に決まってた』って言ってたから望んでこのテーブルになった訳じゃないんだろう。
それが不機嫌の原因か。
目線の先には……木原課長がいる。
なんだ、訳ありだったのか、木原課長と。
まあ俺にとってはどーでもいいことだな、興味ないし。

決められた席に座ってたのは最初だけで、みんな移動してそれぞれ楽しんでいるようだ。

「佐伯、部長んトコいくぞ。お前も来い、ほら」

仕方ないな、気は進まないが挨拶しとかないといけないしな。

「部長!今日から俺も佐伯も部長の下で働けるなんて、幸せですよ!!なぁ、佐伯」

「ええそうですね。部長これから宜しくお願いします」

「そうかそうか!!よし、今夜は大いに飲もうじゃないか。さあ宮本くん、ビールでいいか?」

「ありがとうございます。でもここは若いもんからでしょう、部長。ほら佐伯、部長から注いでもらえるなんて光栄だぞ」

ほら始まった。
部長の機嫌を損ねない方が得策だろうし、とりあえず飲んでおくか。

「さあ、部長も飲んで下さいよ!ぜひ私にお酌させてください!!今夜はとことん飲みながら、部長の今後のビジョンについて詳しく聞かせていただきたいなと思ってるんですよ。なぁ、佐伯」
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