real face
「とりあえず俺は見守ってるから。まひろもあんまり気合入れ過ぎずに、リラックスしろよ!自然体が一番だからな。翔のヤツもどこまで本気なのか、ちょっと気になる所だけど。お試し、みたいな感じでいいんじゃないか?まぁ頑張れよ」

お試し……かぁ。
やっぱり仕事のコンビみたいに、試用期間ってあるのかしら。
だとしたら経験値がほぼゼロなだけに、さっさとお払い箱になったりして。

「せいぜい呆れられないように、気を付けます……」

って!
いつの間にか私まで付き合いをOKしたみたいになってるし。
だけど、多少の抵抗感はあるものの、嫌じゃない気がしているのも事実。

そうこうしてる間に、マンションに到着。

「送ってくれてありがとう、イチにぃ」

「いや、菜津美に会いに行くついでだ、ついで。あくまでも菜津美に会うのが目的だから。お前のためじゃないぞ」

「何言ってんの。無理矢理スッピンの私を呼びつけておいて。なつみんに浮気を疑われないようにね~。おやすみイチにぃ」


──6月。

緊急ミーティングから、2週間経った。
ワーセクとの共同プロジェクトが大詰めを迎え、残業続きの毎日。
たまに早く帰ることが出来れば、シフトを入れて食事を作ったりして、なかなか充実した日々。

佐伯主任は、仕事が休みの週末まで忙しくしていたらしい。
付き合い始めて最初の週末は、遠方に住んでいる従妹の結婚式。
そして先週末は、シュウにぃの引っ越し手伝い。

一応、付き合うことになった私たちだけど、まだデートらしきものはしたことがない。
だけど、特に変わることもないだろうと思っていた日常の中で大きく変わったことがある。

残業が多くなり、帰る時間が遅いときには必ず佐伯主任が家まで送ってくれるってこと。
2人とも電車通勤だし、同じ沿線上だからかもしれないけど。
私の利用する駅で一緒に降りて、家まで一緒に歩いてくれる。
こんな経験は初めてで、正直戸惑っている私。

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