real face
見えてきた、蘭さんが住んでいるマンション。
もう何度かこうして送って来てるから見慣れてきたけど、なかなか立派な外観だ。
このマンションは確か、新と信を車で送ったときに初めて来たんだよな。

偶然?

この前の緊急ミーティングで蘭さんを迎えに来た時に、イチにぃが電話で話してた弟の名前も『まこと』と言っていたし。
やっぱどう考えても偶然なんかじゃないよな。

マンションの入り口近くに停まっていた一台の車が、スーッと動き出して先でまた停まった。
まさか、あれって……?
蘭さんは気にしていないようだけど、俺は気になる。

いつものように別れの挨拶をする彼女を引き留め、この先に見えている公園へと誘った。

俺が公園に向かって歩き出すと、また車は動き出し、今度は真っ直ぐに走って消えていった。
適当に車を回して、また戻って来るつもりか。
あくまでも気付かないふりで、やり過ごしてやる。


公園のベンチに座って、俺はブラックコーヒーを飲む。
蘭さんは、カフェオレを。

「……俺たちの今の関係、言ってみて」

「簡単に言えば"上司と部下"ですよね?」

まあ、そう来るだろうと思ったけど。

「………そっちじゃなくて」

どうしても、彼女の口から言わせたい。

「一応付き合ってるんですよね。恋人って関係になるんでしょうか?」

一応、ね。
こんな感じで話していて、修が見ているとしたら……。
見えるんだろうか?恋人同士に。

ちょっとくらい強引にいったほうがいいかも知れないな。
並んで座っているとはいえ、少し離れている距離を縮めていく。

「……男女交際の経験は?」

「……ご想像にお任せします!」

真っ赤な顔をして『ない』って言ってるようなものだ。

「……キスも未経験ってことになるのか」

だとしたら、彼女にとってはファーストキスってことだろ。

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