婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 社ビルを出てふたりが連れていってくれたのは、メイン通りから一本裏手にあるカフェダイニング。

 表参道という土地に良く似合うお店だ。

 床も壁も客席のテーブルも、全てが木造りのナチュラルな内装が癒される空間で、植物が壁や天井からぶら下がっている。

 カウンターには多くのリキュールの瓶がディスプレイされていた。

 案内された円卓の席で、それぞれメニューを決めてオーダーを出す。

 芳賀さんがここのフレンチトーストが美味しいと教えてくれたから、迷わずそれを注文した。


「うちでの仕事には慣れてきた?」


 オーダーを終えて一息つくと、芳賀さんもさっきの照井さんのように私の様子を気遣ってくれる。


「はい。おかげさまで、少しずつですけど」


 そう答えると、左横から照井さんが「それ、俺がさっき聞きましたよ」と口を挟んだ。


「私が紀平さんの教育係なのよ? なんで照井が私より先に聞いてるの」

「別にいいじゃないですか、気に掛けたって」


 私のことで言い合いをされるのも癪で、「あの」と口を挟む。


「皆さん親切に教えてくださるので、本当に助かってます」


 今までの仕事とは全くジャンルも違う、何もかも初めての仕事ばかり。

 それでも、周囲の人たちのサポートが手厚くて助けられている。

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