婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


『あの子、今から高速バスで帰ってくるとか言ってるんですが、そちらで何かありましたか?』


 そんなことを聞き、またかけ直すと慌てて通話を終わらせた。

 何が一体どうなっているのか、頭の中は真っ白になりかけていた。

 わずかに考えられる一部で、里桜がどうしてなんの相談もなく実家に帰ると家を出てしまったのか、ひたすら考えていた。

 だけど、思い当たる節はいくら探しても思い当たらず、代わりにマイナスの展開ばかりが頭を埋め尽くしていった。

 エンゲージリングを渡した時、里桜から俺の欲しい言葉はもらうことができなかった。

 やっぱり、いくら考えても、あなたとこの先の未来は考えられない。

 残されていたエンゲージリングは、そんな意味を物語っていたのかもしれないと思うと、居ても立っても居られなかった。

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