婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 青山に用意したというマンションは、地上六階建ての高級低層マンションだった。

 一見、マンションだとは思えないデザイン性に富んだ建物は、周囲の人々の足を止めてしまうだろう近代的な造り。

 普通のタワーマンションとは違い上層階に向かって段々になっていて、外観はシャンパンゴールドのルーバーとガラス面のコントラストが美しい。

 車ごと敷地内一階に入っていくと、エントランス前に車寄せが用意されている造りだった。

 成海さんは車を停車させると、運転席を降り助手席へと回ってくる。

 開かれたドアからそろりと足を降ろすと、差し出されていた手に緊張しながら自分の手を載せた。


「すみません、ありがとうございます……」


 触れた手は温かく、一気に鼓動が激しさを増す。

 優しい力で握られた手はそのまま引かれ、エントランスホールへと向かっていく。

 エントランスの中へ進んでいくとまた圧巻で、思わずキョロキョロと周囲を見回してしまっていた。

 入ってすぐのところに、出迎えるように置かれた巨大なフラワーアレンジメント。

 イメージとしては、華道家の展覧会などに飾られているような作品で、みなぎる生命力を感じる力強い作品だ。

 壁や床は白で統一され、その中に木のぬくもりを多く取り込んだデザインはどこかやすらぎを感じる。

 照明は落ち着いたオレンジ色の光をところどころに灯していた。


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