婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 その夜――。

 運ばれた荷物を荷解きしたり、近くのスーパーマーケットに買い出しに出たりして、あっという間に空は暗くなっていた。

 その後、仕事に戻っていた成海さんが帰宅すると、近くのレストランに食事に連れていってくれた。

 その外出から、少し前に帰ってきたところだ。

 落ち着く明るさに照明が落ちた広いリビング。

 クリーム色の座り心地のいい革張りのソファに並んで掛け、向こうに見えるライトアップされたバルコニーの緑を眺めている。

 夜になって少し風が出てきたようで、木々の葉が細かく揺れている。

 手渡されたシャンパングラスに黄金色のスパークリングワインが注がれていく。

 細かな泡が弾けていくのを目にグラスを重ね合わせた。


「これからのことだけど……里桜さんは仕事は続けたいんだよね?」


 仕事……介護の仕事は辞めて、成海さんの会社に転職しないかと言われたことだ。


「それとも……花嫁修業に専念する?」

「へっ……!?」

「俺はどっちでもいいと思うよ? 里桜さんの好きな方にすればいい」


 ふふっと穏やかに笑って、成海さんはグラスに口をつける。

 その横顔が綺麗で、つい吸い込まれるように見つめてしまった。

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