ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
「聖獣リュカオン様、万歳!」

「第三王子イクシオン殿下、万歳!」

美貌の青年を振り返る。無表情で、招待客に手を掲げていた。

「あ、あ、あなた、第三王子イクシオン殿下だったんかーい!」

私の叫びは、「聖獣の乙女、アステリア嬢、万歳!」と言う言葉にかき消されてしまった。

誰も、私の主張なんて聞いていない。

鋭い視線が突き刺さったような気がして視線を下に向けると、ハンカチを噛んで悔しそうな様子のエレクトラの姿が見えた。顔に、「抜け駆けしやがって」と書かれてある。

そういえば、彼女は第三王子イクシオン殿下の妻の座を狙っていたのだ。

どうして、突然婚約の話なんか出たのか。理解できない。

「聖獣リュカオン様、万歳!」

「第三王子イクシオン殿下、万歳!」

「聖獣の乙女、アステリア嬢、万歳!」

背後のイクシオン殿下が、満足げに呟いた。

「これで、我が国も安泰だ」

何が、“安泰だ”だ!!

私の心には、まったく安泰など訪れていない。

皆のキラキラとした期待の視線を浴び、頭を抱えて「どうしてこうなった!」と叫んでしまった。
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