捨てられる前に捨てましょう

仲直り?

扉に目を向けると、執事が足早に近づいて来るところだった。

「ソフィア様、お食事中申し訳ございません」

「構わないわ。なにか有ったの?」

「アディ殿下がいらっしゃいました」

「ええっ?」

驚きのあまりはしたない声をあげてしまう。

「どうして? 約束していないわよね?」

「はい。先ぶれもなくおひとりでいらっしゃいました。今は応接間でお待ち頂いております」

執事は困惑の表情だけれど当然だ。普通の王子は突然貴族の家を訪ねたりしない。

「……分かったわ。すぐに行きます」

食事は殆ど終えている。

私は残っていた紅茶を急いで飲むと、急ぎ応接室に向かった。


クラウザー公爵家で一番格式の高い応接室のソファーで、アディはゆったりと寛いでいた。
私が部屋に入ると、笑顔になる。

「よお」

全く王子らしさのない気楽な挨拶。

アディは私の前では何の気遣いもしない。まあ私も私的な場ではアディと呼び捨てにしているくらいだから、人のことをどうこう言えないのだけれど。

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