捨てられる前に捨てましょう
「あ、あれは……なんでもございません。ソフィア様こちらに。後ほど王子殿下より説明があるはずですので、どうか誤解なきよう」

怒りに苛まれた私は、女官に冷ややかな視線を送る。

「この状況で、言い訳のしようもないと思うけど」

「い、いえ、あの……」

「そんなに委縮しなくていいわ。あなたは何も悪くないのだし」

私の言葉にほっとしたのか女官が表情を和らげる。けれど次の私の言動で再び顔色を無くした。

「悪いのは全てアディよ!」

「えっ? お、お待ちくださいソフィア様!」

私は女官の制止を振り切り、回廊から地面に降りる。そのまま真っ直ぐにアディたちのいる中庭の端に脇目も振らずに向かう。

アディ、許すまじ!

誠実そうな態度で私を油断させておいて、陰で密会しているなんて。

今までのチャラチャラした態度も嫌だったけれど、今回の手の込んだ裏切りはもっと頭にくる。

全く趣味ではない置物を丁寧に飾って新婚生活に備えた自分がバカみたいだ。

怒りのエネルギーが足音を大きくしたのか、アディが素早く振り返った。

隙なく細められた眼差しは、私の姿を認めると驚愕に開かれる。だけど今更慌てたってもう遅いわ!

逃がさないと気迫を込めてアディを睨む。

すると彼は明らかに動揺して私から目を逸らした。

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