捨てられる前に捨てましょう

いきなり何を言い出すの?

「どうしてサンダリオ?」

見当違いにも程がある。

「あいつのことを信頼してるじゃないか。やけに親しいし、ただの護衛とは思えない。それにあいつがお前の部屋に入って行くのを見たんだよ」

「いつのことか分からないけど、部屋には何度か来ているわ。私が呼んだの」

「やっぱりお前!」

アディがかっとしたように声を荒げる。私は平然と言い返した。

「サンダリオは私の侍女ルイザと恋仲なのよ。でも秘密だからアディも口外しないでよ」

令嬢達に大人気のサンダリオの恋人が、侍女の身分だなんて知られたら邪魔が入る可能性がある。正式に婚約が纏まるまでは公表しないという我が家の方針なのだ。

だけど誤解されていたとは知らなかった。

「ねえアディ、私がどうして凄く怒ったか分かったでしょう?」

アディはしばらく考えそれからはっとしたように、目を見開いた。

「もしかして……」

彼の頬も耳も真っ赤になる。私は自然と微笑んでいた。

「私もアディが好きよ。だからもう浮気はしないでね」

「しないて言ってるだろ?」

「それからもっと気持ちを伝えて欲しい。言葉にしてくれないと不安になるもの」

アディが想像以上のヘタレ王子だと言うのは分かったけど、それでも時々は好きだと言って欲しい。

私も素直になってちゃんと言うから。

「アディが大好き」

アディは息を呑み、目を見開く。
それから真っ赤になって……言葉の代わりに、私の唇を熱く塞いだ。






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