捨てられる前に捨てましょう
「どうして攻撃して来ないの? こんなんじゃ訓練にならないじゃない!」
アディは気まずそうな顔をしながらゆっくり立ち上がる。
「ソフィアに攻撃なんて出来ない」
「どうして? これは訓練なのよ?」
彼は私の相手が出来る数少ない存在だと言うのに。
我が家の騎士たちは皆優秀だが、どうしても公爵令嬢の私に遠慮がある。
だから、私より身分が上で婚約者でもあるアディは適役なのだ。それなのに!
非難の視線を送る私に、アディは無言で困ったように頭を掻く。
「だって……仕方がないだろ?」
ようやく返事が来たと思ったら、内容がない。
私はぐっと眉根を寄せた。
「どうしてよ? 私じゃ弱すぎて相手にならないってこと?」
「ち、違う! ソフィアは強い。非力さを補うスピードと技は見事なものだ。何より気迫が凄い。絶対に勝ちを諦めないという執念は俺も見習わなくてはならないもので……」
必死に弁解するアディ。必死に褒めてくれているけれど……。