極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「いいか、お前は俺のものだ」

 スリッパのまま下に降り、玄関のドアに手をつく裕ちゃん。

 追い込まれた私は、背中をドアにくっつけるしかなかった。

「人妻が、違う男とふたりで会っていいと思っているのか?」

「違う」

「何が違う。俺に隠し事をするのは許さない。全部話せ」

 目の前に迫った裕ちゃんは、切れ長の目に怒りをみなぎらせていた。

 こんな裕ちゃんを見るのは初めてで、怖くて涙が溢れた。

 でも、私はお嬢様の羅良じゃない。こんなことで負けてたまるか。

「……じゃない」

「なんだって?」

「裕ちゃんだって、隠し事ばかりじゃない!」

 両手で思い切り突き飛ばすと、裕ちゃんはよろけはしなかったものの、体を離した。

 驚いて丸くなった瞳が、私を見つめている。

「裕ちゃんだって、羅良の他に好きなひとがいるんでしょ。だから、羅良が失踪しても、ちゃんと探してくれなかったんでしょ」

 涙声と同時に、両目から滴がボタボタと落ちた。

「どうしてよ。ふたりとも、こんなふうに周りを裏切るくらいなら、最初から付き合わなければよかったじゃない」

「希樹、ちょっと落ち着いてくれ。話を聞いてくれ」

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