極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

 そこまで思いつめていたなんて、知らなかったから。そして気づけなかった自分たちに失望した。

「裕ちゃんは、私が同性愛者であるということをカモフラージュするために、付き合おうと言ってくれた。婚約の話が出たとき、迷ったけど付き合いを続けることにした。家どうしがきまずくならないために。今思えば行き当たりばったりだけど、当時は必死だった」

「男と付き合っていれば、周りは羅良をノーマルと思うよね」

「そう。そして裕ちゃんは、いつも私を支えてくれた。ネットで知り合った女の子に会いに行くときも、こっそり途中まで送ってくれた。応援してくれたし、話を聞いてくれた。私は裕ちゃんの前では、ありのままでいることができた」

 胸が痛くなった。

 どうしてその存在が、私じゃなかったのか。

 私に話したら、両親に言ってしまうとでも思われたのか。

「希樹はね、近すぎるんだよ。別に信頼してないとかそういうことじゃない。希樹は私の痛みを、自分のことのように受けて傷ついてしまうから、逆に心配だったんだ」

 私の心の中を呼んだように、羅良は苦笑した。今度はちゃんとした苦笑だった。

「そして大学で、今の彼と出会った」

「もしや、彼……いや、彼女?」

「そう、男装している女の子。かっこいいの。それで、可愛いの。優しいの」
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