極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

【家を出ます。結婚はできません。探さないでください。パパ、ママ、ごめんなさい。 羅良】

 これ、もしかしなくても家出の書置き!?

 メモをのぞきこんだ母が、ふうっと息を吐いてその場に倒れ込む。

「ちょ、お母さんしっかりして! お父さん、お父さーん!」

 ショックを受けて気を失った母の頬を叩きながら大声を出すと、のそのそと父が現れた。

「何の騒ぎだ」

 父は緊張して眠れなかったような顔をしていた。が、放心した母を見て、完全に目を覚ましたようだ。

「これ、これ……。羅良が家出しちゃった」

「なんだと!?」

 父はメモをひったくると、目を白黒させた。

 母を隅に寝かせておき、羅良の部屋をふたりで捜索する。

 十分後、羅良の財布と通帳、携帯と少しの衣類、化粧品、スーツケースがなくなっていることがわかった。

「家出……っぽいね……」

 残されたメモ。綺麗に片付いている部屋。夜中静かに出ていった姉。いくらかけても繋がらない携帯。

 これは事件ではなく、本人の意志による失踪と考えるのが妥当だろう。

 私が呟くと、幾分落ち着いてきた母がオロオロしだす。

「警察に届けを出さなきゃ。失踪届」

「いや、それよりも」

 父が青い顔で呟く。

「明日は結婚式だぞ……」

< 3 / 210 >

この作品をシェア

pagetop