極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
【家を出ます。結婚はできません。探さないでください。パパ、ママ、ごめんなさい。 羅良】
これ、もしかしなくても家出の書置き!?
メモをのぞきこんだ母が、ふうっと息を吐いてその場に倒れ込む。
「ちょ、お母さんしっかりして! お父さん、お父さーん!」
ショックを受けて気を失った母の頬を叩きながら大声を出すと、のそのそと父が現れた。
「何の騒ぎだ」
父は緊張して眠れなかったような顔をしていた。が、放心した母を見て、完全に目を覚ましたようだ。
「これ、これ……。羅良が家出しちゃった」
「なんだと!?」
父はメモをひったくると、目を白黒させた。
母を隅に寝かせておき、羅良の部屋をふたりで捜索する。
十分後、羅良の財布と通帳、携帯と少しの衣類、化粧品、スーツケースがなくなっていることがわかった。
「家出……っぽいね……」
残されたメモ。綺麗に片付いている部屋。夜中静かに出ていった姉。いくらかけても繋がらない携帯。
これは事件ではなく、本人の意志による失踪と考えるのが妥当だろう。
私が呟くと、幾分落ち着いてきた母がオロオロしだす。
「警察に届けを出さなきゃ。失踪届」
「いや、それよりも」
父が青い顔で呟く。
「明日は結婚式だぞ……」