距離感
ゆっくりと歩きながらの帰路。

夜になっても、まだまだ暑い。

風はあるけど、温風としかいいようがない。

ベタつく風が身体にまとわりつくようだ。

「こんな熱帯夜はさー、アイス食べなきゃ駄目だよねー。カッチャン奢ってあげるから、アイス買おうよー」

「え…、アイスってもう夜遅いですけど大丈夫ですか」

時計は23時を回っている。

「アイスは冷たいから、カロリーゼロなんだよ。大丈夫だって」

それは、どこぞのお笑い芸人のネタではないかと思ったけど。

黙って、王子について行く。

駅の近くにあるコンビニに入ると、ひんやりとして落ち着く。

アイス売り場の前で二人で並ぶ。

「いやー、食べたいアイスいっぱいありすぎる!」

無邪気な子供のように王子の目はキラキラと輝く。

本当にこの人、アラフォーなのかな?

整った横顔に見とれてしまいそうだ。

「王子って、意外と甘いもの好きですよね」

真剣にアイスを見ている王子に言うと、

「うん、大好き」

と目を合わせて、言った。

別に自分に対して言われたわけじゃないのに。

ダイスキという単語を言われた瞬間、

胸がギュンと痛くなった。

(やっぱり、この人のことが好きだ)

イケメンだから、だけじゃなくて。

素直にこの人のことが好きなんだ。

自分の心がそう言っているんだ。

「カッチャン、どれにする?」

「え、私は…」

王子と一緒にいる時間を大事にしたい。

そう、心から思った。
< 31 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop