距離感
「ふくふく~、まーた怒られたのぉ?」

さんざん怒鳴られたというのに、王子はヘラヘラと笑いながら彼女と話している。

王子のことを唯一、「ふくふく」と呼ぶのは一人しかいない。

(かなめ)あかり。

私と同い年だそうだ。

最初、見たときは2~3個年上かと思った。

初めて会ったときから、要サンは王子の側にいた。

背が高くてすらっとしていて、最初は美男美女のカップルがいるから「何だ、この会社は!?」と思ったくらい。

王子のイケメンと彼女の美しさは。

ぽかんとするしかない。

え、ココはモデル事務所ですか? 何かの撮影場所ですか?

私、場所間違えたと混乱した。

やっと慣れてきたのかなと思いながらも。

でも、時間が経つにつれて、私は。要さんのことが嫌いだと思った。

同い年とは思えない。

社会人なんだろうかと思う。

王子と一緒に遅刻して出勤し。

お昼休みはいつも王子と一緒。

帰りもお互い都合が合えば一緒に帰っている。

会社公認のカップルなんだなーと思った。

最初は羨ましいと思っていたけど。

いつのまにか、ウザいという言葉が支配し始める。

王子はアラフォーで、仕事が出来なくて。


あんな美人の彼女がいる。

だから、この会社にいるってことなのね。
< 6 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop