庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「ねぇ千晃くん。昨日ってさ……誰と一緒だったの?」
「え? あぁ、取引先の人だけど、それがどうかした?」
「ううん、なんでもない。ちょっと聞いてみただけ」
 
 きっと千晃くんは私が森永ホールディングスとの事情を知っていることを知らないんだろう。三条さんの怖いくらいの憎悪も。

 彼女の鋭い視線を思い出すと今も背筋がヒヤッとする。あんな風に面と向かって誰かに敵意を向けられたのは初めてだった。

 人は自分の欲しいものの為だったら、どんな悪魔にだってなれるのかもしれない。それをまざまざと見た瞬間だったようにも思えた。


「じゃあ行ってくる」
 
 身支度を終え、靴を履く千晃くんをエプロンを外しながら見送る。

「うん、いってらっしゃい」
「あのさ、椎花」

 すると千晃くんが、真剣な顔つきで私を見据えた。なんだか嫌な予感がして心臓がどくっと脈打つ。


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