庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
◇
「えっ? えっ? どういうこと? それって結婚がなくなるかもしれないってこと?」
昼休み、いつものお店で昨日のできごとを話すと、普段気丈な彩子が顔面蒼白にしながらオロオロしている。
「つまりその女が高宮さんを奪おうとしているってこと?」
「ううん、逆だと思う。たぶん私との結婚が決まる前から、彼女との結婚話はあったんだと思う」
「じゃあその政略結婚を回避するために、椎花と婚約したってこと? そんなのあんまりだよ……」
声を震わせる彩子を前に、私まで込み上げてきそうになる。
「高宮さん、どうする気なんだろう……」
「わからない。でも今日大事な話があるって言われている」
もしかすると最後の晩餐のつもりかもしれない。あの優しい笑顔も、温かい瞳とももうすぐお別れしないといけないのかと思うと、胸が張り裂けそうだ。
「椎花の気持ちは? もし破談にしようって言われたら、納得できるの?」
彩子に真剣な眼差しで問われ、唇を噛んだ。
「……わからない」
というより、想像がつかなくて怖いというのが正直な気持ち。もしかすると泣きじゃくるかもしれない。はたまた、千晃くんの困った顔を見たら笑顔で「わかった」って言ってしまうかもしれない。