庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


 翌朝、千晃くんのらしくない素っ頓狂な声で目が覚めた。ゆっくり瞼を開けると、千晃くんはまだうとうとする私を見下ろしたまま唖然とした顔で固まっていた
 
「は? え?」
「んー、おはよー」
「なんで?」
「なんでって千晃くんが離してくれないから」

 困惑する千晃くんに昨夜のことを一部始終話す。話をするにつれ、千晃くんの顔はだんだんと気まずそうな顔になっていって、終いにはドヨーンと音でもしような顔をしていた。

「俺が椎花の手を引っ張ったなんて、全然覚えてない」
「何回も起こしたんだよ」
「嫌だったよな。ごめん」

 ぐっと伸びをしていると深刻そうに謝られ、ぽかんとした。
 
 どうして嫌だなんて思うのだろう? 相手は千晃くんなのに。それに人が傍にいると暖かくて、むしろいつもよりぐっすり眠れたくらいだ。

「全然。嫌じゃなかったよ」

 だから私は素直にそう答えた。するとどういうわけか、千晃くんはくしゃくしゃっと髪を掻いて、大きなため息をつきながら頭を抱えていた。

 え? なに? その行動の意味はいったい?

「ほんと、お前ってやつは、」
「え?」

 なに? 籠ってて聞き取れなかった。

「いや、なんでもない」

 顔洗ってくる、と言い千晃くんは洗面所へと行ってしまった。取り残された私は一人ソファの上で首を傾げていた。

 いったい今、なんて言ったんだろう?

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