優等生の恋愛事情
なんだか新鮮だった。優等生の三谷くんらしくない気がして。

でも、意外な一面を見られたようで……ちょっとおもしろかったりして?


「それにしても、あいつら本当ひどいな」

「ん?」

「溝口さん一人に掃除押し付けて帰ったんでしょ? まったく……」

「気にしてないよ。大変でもなかったし」

「溝口さんは怒っていいんだよ」


納得いかない様子の三谷くんが、なんていうか……すごく三谷くんらしいなって思った。


「私は大丈夫だよ」


三谷くんが納得いかないって怒ってくれたから、もうそれだけで。


共感してくれる人がいるって、
なんて嬉しいのだろう。
なんて元気が出るんだろう。


「僕は向こうの窓を閉めたらそのまま部活行っちゃうけど」

「あ、うん。本当にありがとう。三谷くんが来てくれて助かったよ」

「お互いさま」


にっこり笑って軽やかに去って行く三谷くん。

私はその後ろ姿をなんとなく名残惜しい気持ちで見送った。


そうしてまた、一人きり。


(一人が落ち着くはず、なんだけど……)


心に降りてきたのは、安堵ではなく淋しさだった。


(男女の友情ってあるのかな?)


きっと、答えの出ない問い……。


溜息をつく私の傍らで、まるで聞こえないふりでもしているみたいに、両性具有の人体模型が無表情で佇んでいた。
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