優等生の恋愛事情
今日は、私にとって記念すべき初デート。

昨日の夜は、遠足前夜の幼稚園児みたいに眠れなくって。

今朝は大々的に寝坊して……。


何を着ようか迷いすぎて、考えることに疲れ果て。

結局は無難なワンピースに落ち着いて……。


すっごく楽しみで、
すっごく嬉しいのに、
やっぱり……ちょっと緊張しちゃう。


(だから、この場所でよかったかも)


「ここの図書館、僕はわりとよく来るんだ」

「私も友達と来たりするよ」


図書館での宿題デート(?)を提案してくれたのは三谷くんだった。


《宿題もう終わっちゃった?》

《まだなら図書館で一緒にどう?》

《宿題終わってたら2学期の予習でも》


メッセージを見たときは、嬉しすぎて息をするのを忘れたくらい。

読み返すとまたなんとも、真面目で真っすぐな三谷くんらしくて。

思わずくすりと笑みがこぼれた。


宿題を始めているのは当然で?

既に終わっているかもしれなくて?

2学期の予習もするよね? って。


(三谷くん、何の疑問も持ってないよね)


彼はちょっと天然というか。そこがまた、おもしろくて可愛いのだけれど。

世の中には始業式の前日に慌てて宿題する人もいるって知ったら「えーっ!」て驚いちゃったりして?


でも、そんなんじゃなかった――。


《溝口さんは僕と一緒で宿題早く終わらせるタイプかなって。ちがう???》


(性格、すっかり見抜かれてるし……)

でもなんか、こういうのってすごく嬉しい。

「一緒かも?」「一緒だね」って。

小さな“同じ”を見つけたり、見つけられたり。


私はいそいそ返信した。


《一緒だよ。もらったその日から始める派》

《宿題はあと少し。数学のわからないところ教えて欲しい!》


すると、彼からすかさず返信の返信が。


《僕にわかることなら》


(あー、三谷くんって)

“慎ましい”ってこういう感じを言うんだよね、きっと

彼のそういうところ、
とても好きだと思うし、
やっぱりすごく尊敬しちゃう。


さらに、約束の日の前夜にきたメッセージが可愛すぎたから――。


《明日が早く来るように今夜はもう寝ます》


キュン死、するかと思った。


枕を抱きしめてベッドの上をのたうちまわったなんて絶対に内緒だ。


そうして、
早寝をした三谷くんとは裏腹に
私は眠れぬ夜を過ごしたのだった。
  
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