Fairy
『 もしもし……うん、うん。え?それくらい渢さんも始末出来るでしょ。……あぁ、なるほど。分かったよ、すぐに行かせる。じゃ。 』
どうやら電話の相手は渢さんのようで、電話口から微かに渢さんの声が聞こえてきた。
晴雷さんは電話を切るなり、真っ先に私に視線を向け、こちらへと歩いてくる。
どうしたんだろうと身構えていると、晴雷さんは、ソファーに座る私の目の前にそっとしゃがんだ。
『 紅苺、久しぶりの仕事だよ。 』
「 …私だけ、ですか? 」
『 ううん、狂盛に付いてもらう。 』
「 …………。 」
渢さんのことだ。きっとあれからあまり口を聞いていない私達の仲を、少し縮めようとでも思ったのではないのだろうか。
分かりやすく黙り込んだ私を見て、晴雷さんは柔らかく微笑んだ。
大きな手のひらで私の髪をくしゃっと撫でると、顔だけ後ろに向けて『 游鬼、お願い。 』と言う。
『 はーい。ねぇ、俺は?俺は行っちゃ駄目なの? 』
『 駄目。はい、よろしくね。 』
游鬼さんは呼ばれるなり化粧道具を持ってきて、仕事前の準備は早速始まってしまう。
晴雷さんが狂盛さんに声を掛けると、狂盛さんは何も言わないまま、自室へと行ってしまった。
游鬼さんは何も言わずに私の顔に化粧を施し、時折確認するかのように、何度も私から顔を離してじっと見つめる。
その仕草をする度に目が合って、なんだか恥ずかしい。
「 狂盛さんについてもらうってことは…今日は、私が始末するってことなんですかね。 」
『 んー、かもね。そろそろ紅苺ちゃんにも始末してもらわないとって思ったんじゃない? 』
「 …出来るの、かな。 」
今まではずっとターゲットを誘導したり、皆の後ろで見守っていたから。