Fairy
私なんかに、こんなことが出来るのだろうか。
素人の男でさえ殺せなかったのだ。プロの殺し屋を、始末できるわけがない。
『 …紅苺、僕の目を見て。 』
晴雷さんの言葉に顔を上げると、彼は真っ直ぐな目で私のことを見つめていた。そんな強い意志を持った目で見つめられたら、きっと誰でも逸らせないんだと思う。
私だって今、彼の目から逃げることなんてできないから。
『 …出来そう、かな? 』
こうして優しく聞いてくるところが、晴雷さんらしいなと思った。
みんなのお母さんみたいな存在で、みんなを守ってくれるような存在。
「 ……出来ます、やってみせます。 」
だから私も、強い意志を持ってそう答えることが出来た。
晴雷さんは『 良かった。 』と笑い、游鬼さんは 『 お、頑張れ〜。 』と、私の髪を更にワシャワシャ撫でる。
渢さんに電話でそのことを伝えると、彼も嬉しそうにしてくれた。〔 紅苺ちゃんが俺のことを守ってくれるのか〜。 〕なんて冗談っぽく笑って、電話越しで小さな笑いが聞こえる。
命を狙われているというのに、陽気な人だ。きっと、こんなことには慣れているんだろう。
『 パーティは一週間後。それまでに、ちゃんと心の準備をしておくんだよ。 』
「 ………はい、晴雷さん。 」
私は晴雷さんの目を見つめて、小さな声で答えた。
これは私にとって、本当の意味での最初の仕事だ。ターゲットを誘惑して、上手く誘い込み、殺す。
……私なら出来る。絶対に、出来る。
だって私は、" 紅苺 " だから。