Fairy
どれだけ懸命に手を動かそうとも、顔を左右に動かそうとも、その手はビクともしなかった。
『 ここはな、お遊びの世界じゃねぇんだよ。 』
「 ッ…、 」
自分の弱さを知っているからこそ、彼の言葉が胸に突き刺さった。
『 あの三人も、よくお前みたいなのを一人で行かせたな。あれか、それもあいつらなりの優しさってやつか?この世界がどんな所なのかを、お前に分からせる為に。 』
握られた手首がギリギリと音を立てて、思わず声を上げてしまいそうなくらいに鈍い痛みが走った。
男の人が本気を出せば、こんなに強い力を出すことが出来たのか。きっと、私の腕なんて簡単に折れてしまうのではないだろうか。
そんなことを考えながら彼を見つめると、悪戯に微笑みながら更に手の力を強くする。
ついに耐えられなくなって声を上げてしまうと、彼はすぐに私の手首から手を離した。
『 女だからって、俺が手加減するとでも思ったか? 』
まるで、その瞳に全て読み尽くされているかのようだった。
『 ほら、思い出せ。お前は一体、どうしてここへ来たんだ? 』
「 ……私は、仕事をしに来たんです。 」
『 そうだよな。なら、こんなとこでお遊びしてる暇はねぇよな。 』
そう言って彼が取り出したのは、私でも見たことがあるような拳銃だった。
拳銃をよく扱っている晴雷さんが愛用しているものと同じで、とても威力が強い銃。
『 まさか、素手で殺ろうってわけじゃねえよな? 』と言った彼に、私はそっとドレスの中に忍ばせていたナイフを取り出した。
私が下で、彼が上。
不利な状況だと思えば、不利な状況なのかもしれない。
この状況をどうやって逆手に取るのか、どうやって利用しようか。