Fairy Ⅱ
テレビの画面を見つめたままそう言うと、烏禅の動きが止まったのがすぐに分かった。
しばらくして烏禅に目をやると、ゆっくりとコントローラーを置いて乾いた笑いを零す。
『 なんか俺、馬鹿みたいですよね。 』
「 何が? 」
『 何が、って…。 』
そんなこと聞かなくても、お前なら分かってるだろ、とでも言いたげな様子だ。
烏禅はテレビの電源を消して、コントローラーを片付け始めた。
リビングに静寂が訪れると、二階から微かに聞こえてくるベッドの軋む音。その音を消したかったからかもしれない。それとも、ただ単に気になったからなのかもしれない。
だから僕は、烏禅にこう聞いたんだ。
「 …どういう、感じなの。 」
『 え? 』
「 烏禅は、紅苺の事を愛してるんでしょ。それって一体、どういう感情? 」
僕がこうして他人に " 愛情 " を聞くのは、あの日以来だった。
僕を沢山愛してくれた、あの人達に聞いた時以来。
烏禅は一瞬だけ目を丸くすると、すぐに何かを考えるように目を細めた。
『 俺、語彙力本当に無いんで。上手く伝わるかどうかは分からないんですけど…。 』
自信なさげにそう笑って、烏禅はそのまま話を続けた。
『 どうしても、嫌いになれないんですよ。游鬼さんとの遊びをやめなくても、俺を見る悲しそうなあの目も。…たまに見せる子供っぽい顔も好きですし、人を殺してる時の目も好きです。なんて言ったらいいんだろうな…。 』
理解はできなかったけど、嫌な程に伝わってきた。
この感情も、あの時と全く同じ。
そう、
苦しい。
でも烏禅は、話をやめなかった。
それは、僕が無表情のままで聞いているからだろうか。