花咲き病の私と、歪んだ時空間。
いきなり聞こえてきた声に、少しだけビクッと身体が反応した。




『 ほら、だってこの時代には暒くんは居ないでしょ?だから…その、代わり…いや、代わりはちょっと嫌だな……んと、その…。 』

「 ……私と、友達になってくれるの? 」




最初はちゃんと言葉になっていたものの、私が彼を見つめる度、彼が私を見つめる度、自信を無くすかのようにして小さくなっていく声。

そしてそのまま、彼は私の言葉に遠慮がちに頷くと、小さな声で『 僕と、友達になって欲しいな。 』と笑った。




『 えっ、椿煌ちゃん?! 』




友達になって欲しい、なんて。そんなこと、生まれて初めて言われた。

嫌だった?大丈夫?の声に首を横に振るのが精一杯で、ただひたすらに流れていく涙を手の甲で拭う。
横に視線を向けてみると、胡蝶さんは上半身だけをこちらに向け、ベッドの手すりを掴んで心配そうに眉を下げていた。




「 ぁ、ありがと……う…ッ…。 」




自分で口にした言葉に、更に涙が溢れた。
誰かに感謝をすることが、誰かにお礼をすることが、こんなにも幸せなことだなんて。

私が泣き止まずにいると、胡蝶さんは悔しそうに『 あーもう…動いてよ。 』と、自分の足をギュッと握っていた。
もしかしたら、私の傍に来てくれようとしたのではないか。



…大丈夫。もう、十分暖まったよ。




「 …胡蝶、さん。 」

『 どうしたの? 』

「 私達、今日から友達? 」

『 うん、友達。 』




そんな彼を安心させるように、自分を安心させるように、涙を拭ってそう言った。


緋衣先生も私の理解者でいてくれているし、胡蝶さんも私が過去から来たことを信じてくれた。
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