明日は明日の恋をする
さて、何から話をしようか。私はビールをグィッと飲み、勢いをつけて話を始める。

「少し昔話をしていいですか?…私、高校を卒業してすぐに家を出たんです。」

「へぇ。」

「勉強しろ、友達は選べ、彼氏を作るなんて言語道断だ…事あるごとに父に言われてました。おまけに門限もあってなかなか友達とも遊べなかった。」

話しながら昔を思い出し、私は神妙な顔つきになる。

「なるほど。厳格な父というわけか。」

「えぇ。最初は父の言いつけをきちんと守って良い子にしてたんですけど、高校に入ったくらいから何か可笑しいと思い始めてしまって。」

私はグラスにビールを注ぎ、更にグィッと飲んで勢いをつけた。

「それでも我慢してた。でも、高3の時に初めて彼氏が出来たんです。私すっごく舞い上がって毎日が楽しくて。」

進藤さんは私の長話に耳を傾けながら無言でビールを口にする。

「彼氏とは高校は別だったので会う時間が限られてました。門限さえなければ…そう思って父に門限を無くして欲しいとお願いしたんですけど、結果大ゲンカに発展しちゃって。私は泣きながら家を飛び出しました。」

「門限はきついな。」

「家を飛び出した後、凄く彼氏に会いたくなって彼氏が行ってた塾の近くで待ち伏せしました。でも塾から出てきた彼氏の横には他の女性がいて、2人は手を繋いで歩き始めました。どう見てもカレカノって感じにしか見えなくて、私は彼氏の前に立ちどういう事か問いつめました。」

「…何か何時(いつ)ぞやの光景と似てるな。」

進藤さんが思い出したのは恐らく元彼…義雄の時の事だろう。確かに似た状況かも。私は何だか可笑しくて笑ってしまった。

「あはは、そう言えばそうですね。そして結末も似た感じで、二股かけられた挙句に私は振られました。私が構ってくれないからって理由で…。」

「会える時間が少ない女より、いつでも会える女を選んだわけだ。」

「私だって好きな時にいっぱい会いたかった。なのに何で私だけこんな目にあうの…そう思いながら家に帰りました。そして父の顔を見た時、私は思った。私が幸せになれないのは全部父のせいだと…。それからギクシャクした日々を過ごし、父との関係を修復出来ないまま高校卒業後に私は家を出ました。」

進藤さんは手に持っていたグラスを置き、じぃっと私を見る。
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