寡黙なダーリンの秘めた愛情
「れ、蓮くん、泣かないで」

ポロポロと流れる涙を拭いもせず美咲を見つめる蓮を美咲は慰める。

「美咲に何かあったら俺・・・」

「Oh、オトコナキの蓮のレア写真、getだぜ!」

゛どこかのポ○モンマスターかよ゛

と突っ込みたくなるような言葉を吐いて部屋に入ってきたのは、二人の親友、ホイットニーとジム、蓮の妹の美鈴だった。

「蓮、義一がM州立大学のジェームス教授にも新型人工心肺の情報提供を打診していた裏が取れたわ。ジェームスはうっかり屋さんだから、本当は今日、八雲の営業主任である義一に会って、私に渡すはずのデータを託すつもりだったらしいわ」

ホイットニーの言葉を引き継ぎ、美鈴も知り得た情報を話して聞かせた。

同じ孫という立場にありながら、喜久蔵から煮え湯を飲まされてきたと感じていた政義は、3人の息子が小さい頃からその愚痴を聞かせてきた。

『そして二言目には、お前らは蓮や美咲に負けるな。社長になれ』

と言ってプレッシャーをかけ続けてきたようだ。

義一は八雲メディカルに入社したものの、営業成績は奮わず主任止まり。

義次は八雲メディカルに入社すらできず、政義のコネで何とか八雲のライバル会社であるT光電に入った。

焦る義一だったが、将来は美咲と結婚するという選択肢があると高をくくっていた。

しかし、蓮はあっという間に美咲を丸め込んで結婚してしまい、将来は社長という周囲の期待を集めてしまった。

そんな中、義一は蓮の元カノだという赤池由利亜に目をつける。

゛ホスト通いにはお金が必要だろう?゛

と、由利亜の取り巻きの松本歩花をそそのかし、男女の関係を持って自分から離れられないようにさせながら、蓮と誠也の名前の領収書を改竄させ、不正の証拠集めと横領を繰り返させた。

受付の矢野幸子も同様。

彼女には、由利亜と歩花と共に通っているホストクラブの負担金が、会社のお金を横領して得ていたものであることをわざとリークし、共犯者であるという罪悪感を利用して懐柔していった。

情報漏洩については、業績不振で追い詰められた義次が、会社の上役から八雲の新医療機器のデータを盗めと指示されたことをきっかけに、それを利用して蓮を陥れようとした義一が企てたことだった。

ただ、数年前の情報漏洩には、義一も由利亜も関わっておらず、本当に単独犯であった可能性が高いということだった。

「赤池由利亜だけど、ご両親を社に呼び出してこれまでのことを話したの。とても驚かれていたけど゛2度とそのようなことはさせません゛と約束してくれたわ。田舎に連れ帰って、病院で療養させるそうよ」

京都から帰ると、萌と長友主任がすばやい対応をしてくれていて助かったと、美鈴は語った。

「松本歩花と矢野幸子は辞表を出してきたわ。歩花は最後まで謝らなかったけど、矢野さんは泣いてた。美咲に゛ごめんなさい゛って」

ホイットニーの言葉に、美咲は肩をすくめた。

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